「正直に言ったのに怒られてしまいました。」
以前このような相談を受けたことがあります。
「正直」は良いことかと思いますが、時と場合があります。
5年前の以前の職場でのエピソードです。
私は朝出勤しコーヒーを飲みながら始業時刻まで頭をすっきりさせていました。
始業時間5分前に机の整理をして、今日一日の仕事の量や配分を考えていると始業時間になりました。
すると、いつもいるはずのスタッフが1名いません。
始業時刻になってもスタッフの1人が出勤していないのです。
周りのスタッフも1名いないことに気づき、携帯電話に電話をかけていました。
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トゥルルル。トゥルルル。
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5コールくらいでしょうか、つながったみたいです。
電話越しから聞こえる声から内容を想像すると
「山田さん(仮)、もう始業時間過ぎているけど今どこにいるの?」
電話を掛けたのは直属の先輩の田中さん(仮)です。
山田さん「すみません。今、家です。今から行きます。」
田中さん「えっ?まだ家なの?どのくらいで着くの?」
山田さん「えーと、30分・・40分くらいで着くと思います。あのー、い、急いでいきます。」
田中さん「そう。慌てなくていいから気を付けてきてね。」
電話のやり取りをスタッフ全員が聞き入っていました。
田中さんは受話器を置くなり
田中さん「声が寝起きだったわ。寝坊だね。」
でしょうね。その場にいたスタッフ全員がそう思いました。
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結局50分後に山田さんは出勤し、田中さんにこう言っていました。
山田さん「すみません。起きてはいたんですが時間を間違えたみたいで。」
田中さん「ん?どういうこと。寝坊じゃないの。」
山田さん「はい。起きてはいたんですが・・・あのー。時間を見間違えていました。」
見る見るうちに田中さんの表情が強張っていくのが分かりました。
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本当のところは山田さんしか分かりません。
起きていたのかもしれないし、寝坊かもしれないし。
もしかしたら本当に山田さんは起きていて時間を見間違えたのかもしれません。
それを正直に先輩の田中さんに伝えることが「誠実」だと思ったのでしょうか。
しかし田中さんが感じたのは
「あなたが起きていたかどうかよりも、時間通りに出勤できなかったことを謝りなさいよ!」
ということでしょう。
田中さんからすると「起きていた」ことを「言い訳」として捉えたのではないでしょうか。
山田さんは正直につたえることが誠実さだと思い伝え、田中さんは時間通りに出勤できなかったことをまず謝らなかったという不誠実さを感じ取ったのです。
コミュニケーションのすれ違いはこのような部分から生まれるのでしょう。
山田さん「自分は正直に言ったのに。」
田中さん「なんで言い訳からするのよ。不誠実だわ。」
正直さは状況によっては不誠実に見られることもあります。
このケースで重要だったのは山田さんが起きていたかではなく、時間通りに出勤できなかったという事実です。
出勤できなかったことをまず謝罪しなかった山田さんの順番間違いが生み出したすれ違いです。
そして田中さんも「きっと寝坊だ」と決めつけていた先入観があったから、言い訳として捉えてしまったということも忘れてはいけません。
だからと言ってどちらも責めません。
山田さんには「正直さ」を
田中さんには「寛大さ」を
ねぎらいます。
例えば田中さんに対しては
「田中さんの電話対応、見習う点がありました。遅刻した山田さんに電話越しで“気を付けてね”と言える田中さんの寛大さ・優しさに心が和みました。」と伝えるでしょう。
その上で山田さん田中さんの間に溝を作らないために、
山田さんには報告の順番間違いを
田中さんには決めつけの先入観があったかもしれないね。
と添えます。
たかが寝坊で大事な人間関係を壊してほしくありません。
繰り返しますがたかが寝坊です。
たかが寝坊と思えるようになれば無敵です。
以前は「寝坊なんてあるまじき行為」とまで思っていた私が「たかが寝坊」と言えていますので、そこそこ説得力はあるのかなと思います。
※社の命運を賭けたプレゼンの場での寝坊では「たかが寝坊」とはさすがに言いませんけど。
お互い大人なので自分の行動の振り返りはすぐにできます。
その時は間違った行動や感情になったとしても振り返りができればOK。
完璧な人間なんていませんから。
私も電話越しで聞いていた時寝坊だと決めつけちゃってましたから(笑)
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